TAKのデスタワーブログ

初代ぷよ脳筋デスタワー勢が考察を覚えるためのブログ

cymkさんの功績と初代ぷよというゲーム

cymk-bpuyo.hatenablog.com

魔王ことcymkさんが引退しました。

レートでは64.7%という驚異的な勝率を残し、S級リーグでも優秀な成績を収めた彼ですが、真に注目すべきなのはデスタワー界に大きな影響を与えた研究の成果です。

 

cymkさんが参戦する前、デスタワーは「効率型」「速度型」の2つに分類されていました。効率型はちぎりを増やしてでも色の連結を大切にし、手数を縮めようとするタイプ。対して速度型は手数が多少かかってでもちぎりを減らし、速度を上げようとするタイプでした。

そんな中cymkさんの提唱したデスタワーはいわば「安定型」と呼ばれるタイプのもので、平均手数・時間を最小化する、勝率を最大化するために必要なエッセンスが詰まったものでした。

特にタワー構築の序盤に及ぼした影響は大きく、「確定」「色を捨てる」といった考えを初めてもたらし、言語化したのが彼です。

 

ブログで緻密な理論を展開し、実戦ではタワー界で最強を誇り、文字通り魔王として君臨していたcymkさんが初代ぷよを辞めることは非常に残念です。

しかし初代ぷよというゲーム、とりわけデスタワーという連鎖法の性質上、仕方のないことなのだと思います。

 

 

 

以前にも書いたことがありますが、初代ぷよは対戦ゲームと呼ぶにはあまりに異質で、本質は1人用ゲームに近いと思っています。

ぷよぷよ通をはじめ他のどの対戦ゲームにも存在する「相手との駆け引き」がほとんど存在しません。実戦では多少の駆け引きはありますが、突き詰めれば自分ひとりがどれだけ速く致死連鎖を送れるかというだけのゲームです。

 

もう1つ大きな要素がフィールドの狭さ。例えば囲碁も相手との駆け引きが存在する競技ですが、19×19ではなく、もっと小さい盤で戦う競技だったなら、あるいはとうに研究は終了しているのかもしれません。

対してぷよぷよは1~6列目まで、ぷよの上下や横置きをすべてカウントしても22通りしか置き方がありません。

加えてデスタワーは中央不定形連鎖と違い、定型化された連鎖であるため、ぷよを置く候補はさらに絞られます。

 

以上の要素から、初代ぷよ・デスタワーはよく言えばとっつきやすい、悪く言えば底の浅いゲーム・連鎖法であると言えます(言わずもがな、cymkさんの研究が浅いという意味ではありません)。

しかし、cymkさんの登場以前、タワーはほとんど研究がなされていませんでした。正確には、MOTさんのブログを始め序盤の手組については研究がなされており、画像付きで指針が示されていたものの、置き方のルールは言語化されていませんでした。

タワーの研究、特に言語化がされていなかったのは、自分含めトッププレイヤーが、実戦を通しながら「なんとなくこっちの置き方の方が強そう」というのを積み重ね、実際それで勝てていたからでしょう。

そしてその積み重ねは一つ一つの状況が限定的で、組みにくいツモの捌きや、組みにくい形を避けることまでは研究が及んでいませんでした。一口に言うと研究が浅かった。

 

その中でcymkさんはデスタワーを研究し続け、研究を終わらせました。通常、対戦ゲームは研究が終わるということはまずありえません。相手がいるというだけでそこに対応が生まれ、さらにその対応・・・と研究は次々と深まるからです。しかし初代ぷよは底のあるゲームです。彼は量と質の揃った研究を重ね、デスタワーの最終形を完成させました。

「なんとなく」の部分に切り込み言語化し、ブログとして公開したことがデスタワー界に与えた影響は計り知れません。上位勢は感覚でしか捉えていなかった置き方のルールに得心し(あるいはそれまでの置き方を覆すようなルールに驚愕し)、初心者は最良の教科書を得たわけです。初心者には難しい内容とか言わない!

これによりデスタワーは上から下まで、レベルが引き上げられました。数年前と比べて下位レートの方相手にも苦戦することが多いのは偶然ではないでしょう。

 

cymkさんは記事の中で、デスタワーがレッドオーシャンにあると書いていますが、私の感覚もかなりこれに近いです。革新的な置き方やルール、考え方はおそらく今後も出てこない。

汎用性の高いルールがいくつか見つかるとは思いますし、私自身ネタはいくつか持っています。しかしそれは、頭の整理や考えやすさといった方向にあり、ぷよの置き方という点において、現在のデスタワーはおそらくこれ以上の発展はありません。

もちろんルール付けによってぷよを置きやすくなるということは、長期戦や難しいツモでも安定した捌きを続けられるという、非常に大きな効果があります。

「置き方」は確立されているが、「考え方」はまだ余地がある。ここに研究者とプレイヤーとしての違いが表れているのだと思います。

 

 

 

初代ぷよが対戦ゲームとしてある種欠落しているのは先述の通りですが、ではどこに楽しさがあるのかというとRTA的な部分にあるのではないかと思っています。

(書いててアレっと思って検索したらcymkさんも全く同じこと書いてましたね。でもこの記事より前から思ってたからセーフ!)

最善手を模索していかにミスを減らして最速の致死連鎖を送るか。初代ぷよをプレイしている人は誰しもそういった部分に魅力を感じているのだと思います。そしてこれが初代ぷよの最大の魅力なのだとも。

 

思うにcymkさんは生粋の研究者だったのでしょう。RTAで言うとルートを開拓する人。

最速のルートを確立することにひたすら邁進しましたが、実戦で試行回数を重ねることにはあまり執着がなかったように感じます。実戦では操作精度の向上や、不利状況での潰しや先打ちといった様々なファクターがありますが、そこを突き詰めるのはプレイヤーの仕事であり、研究者の領分ではありません。

個人的には最強の理論を持っているのだからアウトプットでも最強となり、永遠のラスボスでいてほしかったですが、こればっかりは仕方ありません。そして、どちらが良いとも言えるものでもありません。

 

残されたプレイヤーたる我々は、WRを目指して、cymkさんの示したルートを進み、時に少しの更新点を見つけながら試行回数を重ねていくのだと思います。

人のことを指して執着がないと言っておきながら、現在タワー界でのWR保持者は間違いなくcymkさんです。彼からWRを奪取することが、彼の言う種が花を咲かせることなのだと思います。

 

 

 

ともあれ本当にお疲れ様でした。cymkさんのブログがなければ私も拙いブログを始めようとは思わなかったでしょうし、これまで感覚でしか捉えていなかった部分が次々と整理され、タワーがより楽しくなりました。ゴリラが知性を持った瞬間のように。

いつかぶっ倒そうと思っていたので本当に残念ですが、いつかまた対戦出来たら嬉しく思います。

あと律速の記事書いたもののまじでよくわからんので解説記事書いてください(懇願)

 

 

 

最後に少しだけ主に宣伝。 

今の初代ぷよ界は新規の人が次々入ってきてわけわからんくらい対戦してるし全然盛り上がっているのですが、それにしては大会の参加者が少なくて悲しい。

企画もしない自分が言うのはあまりに恐縮ですが、大会の参加者はもっと増えるべきです。大会を盛り上げることが界隈を広げることの早道だと思っているので、でかい大会にして新規をじゃんじゃん入れましょう。

というわけでここまで読んでくださったみなさま、早くエントリーしてください スイスドローは人数が多いほど楽しいぞ

7/20(日)までとのことなのでよしなに

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